■概要■
生殖細胞においてBRCA1/2遺伝子に異常を有する場合、高頻度に乳がんや卵巣がんに罹患することが知られている。このようながんは、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)と呼ばれ、発症予防策として、年齢に応じた検査や摘出術が推奨されている。しかしながら、発症の誘発因子や時期が不明であること、また摘出術は精神的・身体的負担が大きいことから、より詳細な病態解明および予防法の改善が望まれている。申請者は、薬剤治療中のがん細胞において、一塩基編集酵素APOBEC3A (A3A)が誘導され、がんゲノムに変異を蓄積させることによってがんの進化を促進し、薬剤耐性に寄与することを発見した(Isozaki et al., Nature 2023)。以前の研究において、治療前のがん患者の検体においてAPOBEC誘発型の遺伝子変異が観察されていることから、APOBECの発がん過程での関与が示唆されてきたが、その影響力の程度や詳細なメカニズムは不明である。本研究では、1)HBOCの発症におけるAPOBECの役割やその影響力の検証、2)HBOCの発症を予測するためのバイオマーカーの決定や新規予防法の構築を目指す。