金沢大学 超然プロジェクト×先魁プロジェクト×自己超克プロジェクト

バイオイノベーティブデザインと組紐技術による革新的機械材料の創成

プロジェクト代表者 
喜成 年泰
所属組織・役職等 
理工研究域 機械工学系 教授
研究分野 
Engineering, Mechanical(工学、機械) Engineering, Manufacturing(工学、製造) Materials Science, Composites(物質科学、複合材料)
炭素繊維複合材料、バイオイノベーティブデザイン、組紐技術、材料強度
Carbon fiber composite, Bio-innovative design, Braiding technology, Material strength

蓮の葉の撥水性から着想を得た防水材料や蛾の目を模擬した無反射フィルムなど,生物にヒントを得たモノづくりが注目されています。いずれも生物のミクロ構造を模倣した材料開発であり,機械の構造設計や機構設計において生物の優れたデザインが応用されている事例はありません。

生物は高い適応性と順応性,更には外乱に大きく影響されない「ロバスト性」を有しています。また機能的に優れているだけでなく,天然の造形としても私たちの感性に心地よく働きかける要素を備えています。このような優れた要素を備えながら,生物のデザインが機械の構造設計や機構設計への応用が実現されていない背景には,スケールや負荷条件の違いから直接的な模倣が難しいという理由がありました。

炭素繊維を利用した新たな設計技術の開発

近年,炭素繊維が様々な機械製品に利用されています。自動車はもちろん,飛行機の胴体部分にも用いられるようになっています。炭素繊維は,軽量で丈夫なことから,こうした機械の省エネルギー(燃費の向上)に貢献しています。本プロジェクトはこの炭素繊維に注目し,炭素繊維の加工技術である「組紐技術」を活用した複雑形態構造の製造法の開発を進めます。これにより,従来スケールや負荷条件で直接的な模倣が困難とされてきた機械の構造設計や機構設計に生物のデザインを取り込み,革新的な機械材料の創成をめざします。

3つのステップによる革新的機械材料の創成

設計上流部の概念設計段階において,生物形態のデータベースを活用した構造デザイン技術により,設計アイディアを提供します.特に,既成概念にとらわれない設計アイディアを得るために,生物形態に学ぶ方法を採ります.しかし,これでは単に生物形態を参照したに過ぎないため,何等かの評価指標を設定し,データベースを数値化・モデル化し,最適化によって形状決定を行う必要があります.そこで,機械学習を用いた最適設計技術の開発により,最適設計を行います.

最適設計に基づき,組紐技術をもちいて,実際に構造物を作成します。組紐技術は,複雑な形態のものを一体形成することが可能な技術であり,生物由来の複雑な構造や曲線を有する構造を忠実に再現できるものと期待されます。この構造物の材料に炭素繊維を利用することで,飛躍的な高強度と軽量化が実現できます。

我が国のモノづくりは,性能や品質のみに注力し,その結果,ユーザーの満足や喜び,という観点を意識してきませんでした。その結果,国際競争力が低下していると指摘されています。本プロジェクトを通じて目指す革新的な機械材料創成技術が確立できれば,社会や市場ニーズが求めている製品を,高付加価値かつ迅速に生産できるようになると期待できます。

金沢大学が位置する石川県は,組紐をはじめとした繊維資材の一大産地です。こうした技術を活用することで,地域産業の活性化も期待できます。

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