金沢大学 超然プロジェクト×先魁プロジェクト×自己超克プロジェクト

極限環境における新規ナノ・マイクロ物性の研究

プロジェクト代表者 
新井 豊子
所属組織・役職等 
理工研究域 数物科学系・教授
研究分野 
Physics, Multidisciplinary(物理学、総合), Physics, Condensed Matter(物理学、凝縮物質), Nanoscience & Nanotechnology(ナノ科学、ナノテクノロジ)
物性物理学、ナノ物理学、低温物理学、非線形科学、テラヘルツ科学
Condensed-matter physics, Nano-physics, Cryogenics, Nonlinear Science, Teta-hertz Science

ナノテクノロジーは,これからの社会を支える産業の基盤的技術として期待されています。この技術を確立するためには,ナノ・マイクロ領域で,物質がもつ特性(物性)を正しく理解することが重要ですが,こうした極微小環境での基礎物性を研究するためには,超低温・超高真空・強磁場が制御された実験環境が必要です。コントロールできる極限環境を作り出すことで,ナノ・マイクロ領域での物性を調べることができるのです。
このプロジェクトでは,超低温・超高真空・強磁場の極限環境を活用し,新しいナノ・マイクロ物性研究を進めます。

世界トップレベルの極限環境
超低温,超高真空,強磁場の環境を作り出すことはそれだけでも大きな研究です。金沢大学は,これら3つの極限に関する優れた研究実績を有しています。
超低温環境は,量子効果を発現する理想的な環境であり,量子揺らぎの領域へ物理現象を拡張します。超低温環境とは,絶対零度(0ケルビン)に限りなく近い環境を言いますが,金沢大学の極低温研究室は,マイクロケルビンレベルの超低温を実現する冷凍機を開発した実績があり,国内屈指の研究水準を誇ります。
超高真空環境は,清浄な表面,低次元・薄膜構造の創成・評価・制御に欠かせない環境です。ナノ物理学研究室は,世界トップレベルの超高真空非接触原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡開発技術を有しており,表面ナノ物性評価とナノ構造創製に必要となる基盤技術があります。
強磁場環境は,電子のスピンに働きかけ,将来のスピントロニクス応用へ向けた新規機能開拓に必要な要素です。
これら3つの極限環境を実現し,新たなナノ・マイクロ物性研究ができる設備が整っている機関は,世界的にも極わずかです。
このプロジェクトでは,こうした3つの極限環境を活用し,先端計測技術とファブリケーション技術(組み立て技術)の開発に取り組みます。

極限環境がもたらす新たな知見—新たなナノ・マイクロ物性研究
本プロジェクトでは,超低温,超高真空,強磁場の極限環境を充実させ,それぞれが連携融合した形で研究を進められる体制を整備し,その環境下で新たな表面観察・解析システムの構築を目指します。超低温技術と表面測定技術の融合,超低温技術とマイクロメカニクスとの融合を進め,新たなナノ・マイクロ物性研究を切り拓いて行きます。
具体的には,超流動での近接効果や界面物理,トポロジカル超流動,3Heジョセフソンジャンクション,表面界面物理学,力学的センサー技術,光局在,量子力学MEMS,マイクロフォトニクス,表面局在プラズモニクス等の研究課題を想定しています。
本プロジェクトでは,海外機関との連携も積極的に進めて行きます。表面物性研究のドイツ・レーゲンスブルク大学,物性物理全般に優れているロシア・カザン連邦大学,マイクロメカニクスやマイクロフォトニクス研究に必要な微細加工施設を有するアメリカ・コーネル大学やアメリカ国立標準技術研究所などとの連携を進め,若手研究者の交流や博士課程の学生の派遣も進めます。
こうした世界トップレベルの研究環境と最先端研究を通して,独創性・学際性・総合性に富み,優れた課題発見能力と研究能力,さらには指導力(リーダーシップ)を備えた学生・大学院生を育成していきます。
本プロジェクトで得られた成果は,超伝導配線技術,量子コンピュータ,SQUID(超伝導量子干渉計・スピントロニクスを利用した低消費電力コンピュータ),量子マイクロメカニクスなどへの応用が可能であり,次世代の科学技術の基礎となることが期待されています。

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