■ 概要 ■
超巨大科学プロジェクト『21世紀海洋底超深度マントル掘削(以下、マントル掘削とよぶ)』を計画・実行するための活動を継続して行っている。マントル掘削を世界のコミュニティーの中でリードして実現に導くために必要なのは、研究チームによる海洋試料採取の経験と科学成果の“見える化”である。本プロジェクトではプロジェクト担当者らが継続して行なっている海洋試料(および陸上に露出した過去の海洋試料)の解析を加速し、成果報告行うと同時に、海洋底採取を行う科学プロジェクトを提案・実行する。これらの研究活動を通して、海洋立国日本を支える海洋研究への即戦力の研究/教育/技術者を育成する国際的研究機関となることを目指す。前人未到の『マントル掘削』着手は最短でも本研究計画期間終了以降となる見込みである。そこで本プロジェクトでは、H30年度からの次の2年(+1年)間を、前人未到の巨大科学計画を国際的にリードし、実現するために最も重要な開始直前期間と位置づけ、海洋研究を行っている金沢大学内の研究グループの強化と国際連携を進め、以下の2つの項目(柱)を通して、海洋試料採取経験・科学的成果と国際研究推進、および次世代の海洋研究を支える若手研究者の育成を担う国際的海洋研究拠点形成を推進する。
■ プロジェクトの二つの柱 ■
柱1では海洋試料解析・成果報告を通じた国際共同研究の加速を行う。金沢プロジェクト担当者は、ここ三年以内に国際海洋掘削航海4航海、および、過去の海洋プレートが陸上に露出した地域の国際陸上掘削計画に参加している。海外プロジェクト担当者らもこれらの航海・掘削に参加している。本プロジェクト中の3年間は、これらの試料の解析成果を出すことが義務付けられている。本プロジェクト間の連携を強化し、成果の価値を高め、成果報告のスピードを加速する。柱2では海洋試料採取計画の立案と実行を通じた国際研究計画の本格化を行う。過去3年間の間に、本プロジェクト担当者は、複数の国際海洋掘削・直接試料採取に向けた研究計画の立案を行ってきている。これらの研究計画の本申請を行い、海洋底からの直接試料採取を成功させる。
■ グループの紹介 ■
本学のプロジェクト担当者は、国際海洋掘削計画に深く関与していることが特色で、マントル掘削を実行する研究グループとして国内外をリードしている実績を残し、認知されている。『21世紀海洋底超深度マントル掘削』は、リードプロポーネント7名を中心に世界的トップクラスの研究者67名からなる巨大研究チームとして2012年4月に提案済みである。そして、このマントル掘削申請書のリーダーが、本プロジェクトのメンバーである海野である。また、リードプロポーネント7名のうち日本人は海野・森下他2名、残り3名は米国、フランス、英国から1名ずつであり、米国、フランス側とは、本研究グループのメンバーが中心となって採択された頭脳循環若手研究者派遣事業のサポートを通じて、継続的に国際的研究交流が行われている。日本学術会議の「第22期学術の大型研究計画に関するマスタープラン2014」学術領域番号24-3 「掘削科学を用いた全地球システムの解明」の目玉が“マントル掘削”であり、そのサテライト拠点機関として金沢大学が挙げられている。さらに、本研究計画のコアとなる鉱物学(岩石学)に関して文科省科学技術政策研究所「研究論文に着目した日本の大学ベンチマーキング2015」において、被引用件数(09-13)で世界ランキング213位に位置している。
■ 将来構想 ■
本プロジェクト担当者及び関係者を中心とした国際オールスター研究チームの構築と研究提案、研究成果の正のフィードバックを目指す。本プロジェクトでは、海洋試料を用いた解析と成果発信、海洋試料採取の申請(特に、国際海洋掘削計画)を国内外の海洋研究拠点が一体となって行う。この研究チームのメンバーが中心となることで、各研究計画に必要な各項目を解決できるエキスパートを集め、オールスターの研究チームの形成を目指す。これらのオールスター研究チームの立案・海洋試料採取、そしてそれらを用いた研究成果の発信が新たな科学課題の発見に繋がり、次の新たな研究申請へと続く科学の正フィードバック効果を引き起こす。